会長メッセージ
ゼオライトはカーボンニュートラルのキーマテリアル
日本ゼオライト学会会長 |
||
2024年6月より2年間の任期で日本ゼオライト学会の会長を務めさせていただくことになりました成蹊大学の里川と申します。前会長の三菱ケミカル株式会社の武脇様が推進されてきました産学連携による魅力ある学会作りの路線をさらに進めながら、若手の育成と国際的な協力関係を推進していきたいと思います。この2年間は研究発表会での講演とゼオライト誌での特別企画でカーボンニュートラルに向けた取り組みを取り上げてまいりました。この取り組みはますます重要になってきています。産官学の総力戦でゼオライトの果たすべき役割を考えながら、それぞれの課題解決に取り組んでいける活動ができる場にしたいと思います。
昨年度は久しぶりに通常通りに学会運営の出来た1年でした。主要な4事業であるフォーラム、夏の学校、研究発表会、セミナーと、どれも多くの参加者を会場にお迎えして開催できたことは学会運営に携わる一員として嬉しい限りです。改めて日常のありがたさを感じました。一方、コロナ禍の間に世界を取り巻く環境は大きく変わりました。地球温暖化は地球沸騰化とも言われるようになり、温室効果ガスの排出量削減目標も2050年に二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すなど大変厳しいものとなりました。これを実現するには、これまで利用してきた社会資本を大きく作り変える必要があり、またエネルギーの輸入形態も大きく変わることが予想されます。政府も社会実装を見据えてGX推進法を成立させるなど、社会実装を促進する法整備も始めました。2050年はまだ四半世紀先のことですが、気候変動対策として導入する社会資本は、さらに先を見越して作る必要があります。つまりどのような技術でこの難局を乗り越えるかの問いに、どのように答えていくか、我々科学者・技術者は慎重かつ大胆な提案を期待されています。 |
里川 重夫(成蹊大学)
|
|
このような課題解決の突破口になるのは、新しい材料、新しい反応、新しい化学プロセスの発明です。過去の技術史を振り返ると、世界の変革期には、これまで予想もつかなかった新技術が生まれてきました。日本のゼオライト科学の黎明期を支えられた故高石哲男先生は、第二次世界大戦で英国が劣勢を覆せたのは、天然モルデナイトがガソリンのオクタン価向上に利用されたからではないかと述べられました。つまりゼオライトの有用性が見出されたのは第二次世界大戦中のようです。その後、1950年代に入りゼオライトが工業的に製造されるようになると、その用途は触媒、吸着材、イオン交換体と広範囲に拡がりました。特に重油の接触分解触媒は、世界中で使われるほとんどのガソリン製造に使用されていますし、ディーゼル車のNOx分解触媒も多くはゼオライトが使われています。現在、ゼオライトは工業化から70年以上が経過しておりますが、その材料や機能への興味はどんどん拡がりを見せています。そしてカーボンニュートラルに関連する技術となるDAC、水電解、合成燃料、メタノール変換などの多くの要素技術での活用が期待されています。
会員各位におかれては、ゼオライトをはじめ、様々な多孔質材料、層状材料の合成や利用に関する研究開発に取り組まれていることと思います。日本のゼオライト研究者による研究成果は国際的にも評価が高く、今年度開催されるZMPC2024をはじめ、プレシンポジウム、ポストスクールにも多くの海外からの研究者が参加されます。この機会に国際交流を活発に行い、研究情報の取り込みや発信を活発に行っていただきたいと願います。学会組織は大学と企業、国内と海外など多くの方の交流を促すプラットフォームです。皆様の活動がスムースに進むような潤滑油として働ける2年間になればと思います。どうぞよろしくお願いします。 |