会長メッセージ

 2020年6月5日より約2年間、日本ゼオライト学会会長を務めさせていただくことになりました横浜国立大学の窪田と申します。本学会は個人会員、学生会員、名誉会員、シニア会員を合わせて300名強、法人会員36団体からなる学会です。日本化学連合の正会員である14学会の1つであるとともに、規則的なナノ空間をもつ多孔質材料の研究者が集まり、基礎から応用にわたる高度で多彩な研究活動と活発な情報交換を行う場となっています。比較的小規模であることから、世の中の変化への柔軟な対応力とアットホームな雰囲気が大きな特長と言えます。現時点での歴史的緊急事態においても、会員の皆様と一致団結して従来型の学会運営の常識を打ち破り、この世界的な難局を乗り切っていきたいと考えています。
本学会の前身は、第7回国際ゼオライト会議(International Zeolite Conference; IZC)を1986年に東京で開催するため1984年に発足した「ゼオライト研究会」です。IZCはゼオライト科学の分野で最も権威のある国際会議であり、国内におけるゼオライト研究の普及度がまだそれほど高くなかった当時、この会議を誘致し、成功に導いた先人の努力には敬意を払う他ありません。その後1997年に「ゼオライト学会」に改称された後、2016年に当時の運営メンバーの尽力により法人化を果たし、「日本ゼオライト学会」として現在に至っています。

窪田 好浩
(横浜国立大学 教授)
 特筆すべきこととしては、本学会の会員が中心となり原則として3年ごとにゼオライトおよびミクロポーラス結晶に関する国際会議International Symposium on Zeolite and Microposous Crystals (ZMPC)を開催していることが挙げられます。初回は1990年に東京で開催されたChemistry of Microporous Crystal (CMPC)と称する国際シンポジウムでした。その後1993年の名古屋での開催時にZMPCの名称が初めて用いられ、そのまま現在も本学会の継続的な支援によりZMPCの歴史は続いています。そして毎回、海外からも多くの参加をいただき好評を博しています(直近では2018年8月にパシフィコ横浜で開催されました)。
個人的な事情を申し上げますと、私自身はもともと生体関連物質を志向した有機化学分野に身を置いていましたが、30歳を過ぎてからゼオライト合成分野への転身を図りました。その時に温かく迎え入れてくれたのが本学会でした。ちょうど研究会から学会へ改称された頃です。以来、先に挙げたアットホームな雰囲気の恩恵にあずかることができていますが、これはともすれば「ゼオライトの中心的な研究テーマを扱っていなければ入っていけない」といった排他的な体質にもつながりかねません。もちろんそのようなことはあってはならず,あくまでオープンな学会であるべきです。ゼオライト関連科学分野の研究開発は、国連が掲げるSDGsの多くにフィットしています。その意味で、資源・エネルギー・環境関連のみならず医療、創薬、食品、農業といったライフサイエンスを含む、より広い分野の研究者を迎え入れたいと考えています。それはひいては現在の世界が直面している困難な事態の収束にも貢献するはずです。
任期中に特に重視していきたい要素は、①若手のエンカレッジと育成、②国際的コミュニティーへのコミットメント、③産官学連携です。③について補足しますと、ゼオライト科学の分野はとりわけ産業界との関りが深いため、本学会を通じた産官学の強固なつながりは、科学技術のイノベーションに直結します。日本が科学技術立国を目指すためには必須の要素です。また,国の経済を支えているのは企業であり、学会についても同じことが言えます。このことは2008年秋~2010年秋、リーマン・ショックの真っただ中で本学会の庶務理事を務めた際に痛感しました。技術的にも経済的にも、産業界の会員あってこその学会であり、裏を返せば産業界にメリットのあるいわば「力量ある基礎研究」をこの学会で披露することがアカデミア会員の責務であると考えます。産業界とアカデミアが連携しやすい場を会員の皆様と力を合わせて構築・維持していく所存です。会員の皆様のご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。