会長メッセージ

魅力ある学会を目指して

 2022年6月より2年間の任期で日本ゼオライト学会の会長を務めさせていただくことになりました、三菱ケミカル(株)の武脇と申します。前会長の窪田先生が提案されておられました、①若手のエンカレッジと育成,②国際的コミュニティーへのコミットメント,③産官学連携について、引き続き重視していきたいと思っております。企業からの会長ということもあり、特に産官学連携については、より具体的な提案を行い、アカデミア、企業の両方から魅力ある学会にしていきたいと考えております。学会の皆様がたのご支援が無ければ、種々の試みも実を結びませんので、引き続き、一層のご協力をお願いしたいと存じます。
昨年には、気候変動に関する政府間パネルの第6次評価の第1作業部会の報告書が提出され、2022年9月には第6次の統合報告書が提出される見込みです。報告書では、二酸化炭素濃度の上昇についての警鐘が鳴らされ、その削減が急務であることがより具体的に示されています。日本においても2050年にカーボンニュートラル宣言が出され、それに伴うグリーンイノベーション戦略が出されました(2021年6月改訂)。2021年4月には2030年に46%のCO2削減が気候サミットで表明されました。このように温暖化対策は喫緊の課題でありますが、一方で国際エネルギー機関(IEA)などの報告書では、そのための主要な技術はまだ完成されておらず、これからのイノベーションにかかっていると言われています。温暖化対策には、省エネルギー化をより促進するための技術、高効率低コストのCO2回収技術、回収したCO2を有効利用する、いわゆるCCU技術、そのためのCO2フリー水素製造技術、ポリマーのケミカルリサイクル技術など多くのイノベーションを必要とする新しい技術が必要です。ここには、吸着や分離、触媒反応などゼオライトをはじめとする多孔性材料が貢献できる事がたくさんあると思われます。気候変動という地球の危機において、まさしく産官学の連携でゼオライトが地球を救うことができるかもしれないという志をもって研究開発を進められればいいのではないかと僭越ながら思っております。

武脇 隆彦
(三菱ケミカル)
 もちろん、ゼオライトが活躍できる領域は温暖化対策だけではありません。すでに様々な領域でゼオライトが利用されており、最近では、放射線汚染水の処理や、COVID-19のパンデミックにおける呼吸器系治療のための空気中からの酸素濃縮材料などに使われ注目されています。これからのデジタル化社会において、これまでにない機能を持つ材料が必要とされ、ゼオライトも例えばポリマーと複合化させたりすることにより、新しい物性の発現が期待され、用途の拡大が行われるのではないかと考えております。もちろん、そのためには基礎技術の発展が必要です。そもそもゼオライトの合成メカニズムについてもまだよくわかっておらず、基礎技術を発展させることにより、例えば、新しい構造、新しい機能を持ったゼオライトを設計、合成できる可能性がでてくると思います。このように新しい時代に有用な材料を創製していくためには、基礎から応用まで産官学で切磋琢磨して研究開発を進めていく必要があり、このゼオライト学会がそれを促す役割ができるようにしたいと思います。
コロナ禍により、この2年間はゼオライト学会の行事も、種々の制約を受け、オンラインでの開催のみになるなど、残念ながら対面での活動が十分できませんでした。もちろん、今後もオンラインでの会合も利用していく予定ですが、状況に応じて対面での会合も増やし、より密接な情報交換の機会も設けていけるようにしたいと思います。また、ゼオライトやメソポーラスシリカだけにとどまらず、MOFなどの種々の多孔性材料や関連する新しい材料、技術などについても積極的にセミナーや研究発表会などに取り入れ、より広範な方々に注目していただけるように学会を発展させていければと思っております。是非、皆様と一緒に日本ゼオライト学会を有効な交流の場にしていきたいと思っておりますので、皆様からの積極的なご意見、ご協力を賜りますようにお願い申し上げます。